「小4なりすまし」から学ぶ「炎上学」と「技術の規制整備」

自称「小学四年生」の件の影響範囲が、思いの外大きいです。

参考:IT media ニュース《安倍首相、”小4なりすまし”政治サイト「どうして解散するんですか?」をFacebookで批判 「最も卑劣な行為」

この件と、少し前の、技術の想定外利用による事件を結びつけて思ったことを、つらつら書きたいと思います。

要点は2点。想像力が必要であること、それを補うためにパターン化すること。

当初の感想

首謀者による謝罪文の掲載を知る前までの私の感想は、「首謀者も、ネットユーザーも、成りすましとバレを楽しんでいるな」というものでした。

既にネットにまとめられていた「高度なウェブサイト」の指摘は読んでおりましたが、技術以外で「手書き風のきれいな文字」に違和感がありました。

小学生が手書きにしたいなら、自分の字をキャプチャするでしょう。普通にHTMLを書くなら、ありがちなフォントにするのではないでしょうか。「手書き風のきれいな文字」を使うところが大人の発想だなと。

もし「小学四年生」に「永遠の」「心は」という接頭辞や、「の妖精」のような接尾辞を付けて自称していたとしたら、事態は違っていたでしょうか?

技術の規制整備(RIOT:Regulatory Improvement of Technology)

ここで「小4なりすまし」サイトの話題から、ちょっとだけ離れます。またあとで戻ってきます。

事例

少し前に「技術の規制整備(RIOT:Regulatory Improvement of Technology)」というような概念が必要かと思いつきました。

そう思うに至った事例を示します。

フィルタリング付きブラウザ

青少年のインターネットの利用に際して、出会い系サイトから犯罪被害にあったり、またポルノ・犯罪・薬物等の有害情報に触れたりすることを防ぐ目的で、2007年に総務省は青少年に対しては原則フィルタを義務化するよう携帯電話事業者(キャリア)に通達しました。(そして立法。)

しかしその後スマートフォンが普及しました。するとそのWi-Fi接続では、キャリアのフィルタを介さないため、有害サイトも利用し放題です。

現在それを防ぐにためには、新たにフィルタリング付きブラウザのインストールが必要です。さらにはフィルタリングなしブラウザのインストールや利用ができないよう、アプリ制限アプリのインストールも(子供によっては)必要かもしれません。

3Dプリンタ銃製造事件

2014年5月に、3Dプリンタで製造した銃を所持していたといことで、男性が「銃刀法違反」で逮捕されました。

3Dプリンタのデータがインターネットで簡単に取得できるようになれば、簡単に製造もできる、と懸念が広がりました。

(以前アメリカで学生が核爆弾を作ったというニュースもあったような。その設計図や3Dデータが出回ることを考えると。。。)

芸術家、性器3Dデータ配布で逮捕

女性芸術家が、クラウドファンディングのファウンダーに特典としてスキャンした性器の3Dデータを送ったところ、2014年7月に「わいせつ物頒布罪」ということで逮捕されました。

「芸術か、わいせつか?」とう観点で論じられたり、「3Dデータがわいせつぶつか?」という観点で論じられたりしていました。

RIOT(技術の規制整備)の要点

これらの事例から想起した、RIOT(技術の規制整備)の要点は以下の2点です。

  • 法令や、その文言の検討に、法律家だけでなく技術の進化が分かる人もメンバーに加える。
  • 技術や製品が実現したとき、社会的リスクを分析しパブリックにする体を作る。

1点目は、例えば青少年に対して「携帯電話フィルタ義務化」でなく「携帯電話等インターネット端末」とすれば「Google Glassはメガネなのでフィルタ無しでも可」といったことがなくなります。こういった文言の検討は、特許を出す技術者なら、常に範囲を広く取ろうと工夫しているので、大得意です。

2点目は、端的には「俺が悪い人ならこう使う」とブレストする団体。世の中には「想定外」を思いつく人もいるので最初はうまくいかないかもしれませんが、想定外を失敗学のようにデータベース化すれば、パターン化出来るかもしれません。

再び「自称小学四年生」

謝罪の後も、現在(2014年11月25日)冒頭に示したように安部首相が「卑劣な行為」とコメントしたり、親族の書評欄が炎上状態になったりしているようです。

こうなると、私の当初の感想「接頭辞や接尾辞をつける」ことをしていたとしても、それくらいでは炎上は免れなかったように思います。

成りすまし、ステマの類に対して、如何に世間は嫌悪を示すことか。

想像力が必要な時代

半年くらい前に「バカッター」について友人と話した時に、「それをインターネットに掲載した時に、どうなるか、という想像力がたりない」という意見を聞きました。「もっともだ」と思いました。

インターネット上のコンテンツおよび新規技術での事件を考えると、すべての人にその「想像力」が必要なように思います。

インターネット発信や新製品・サービスは、基本的にはすべての人に開かれています。ターゲットユーザーや自分の周りだけでなく、想像力を巡らせて、あらゆるタイプの人が「どう受け止めるのか」あるいは「どう使うのか」を想像する必要があります。

とはいえ、すべてのタイプの人におもねる必要はありません。コンテンツや広告の冒頭で「こういう人は見ないで、使わないで」とすべての人に開くことをやめることも考えられます。(その最たるものが、法令による制限や禁止。)

非ユーザー層を定義するにも想像力は大切かもしれません。

RIOTと炎上学

想像力を補う点で、RIOTの要点に示したパターン化は有効かもしれません。これも「炎上学」と名前を付けてしまいます。ソフトウェアのデザインパターン、アンチパターンにも共通する手法です。

ここに一つパターンを定義しておきましょう。

パターン1:成りすまし、自作自演

自分の主張に有利なように、あるいは直接利益を得るために、自分の立場を詐称したり、第三者のふりをして記事の作成やコメントをしたりすること。

まとめ

最近のインターネットの炎上や、技術の想定外利用による事件を防止するために以下を提案します。

  • 想像力を巡らせること。
  • データベース化しパターン化すること。

ことが起こった時の誠実さ、真摯さについては言うまでもありません。

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