既存サイトを拡張して、複数のブログやサイトを追加したくなることがあります。
そのような場合に対して、WordPressには「マルチサイト」という機能があります。
単に既存のサイトをマルチサイト化してしまいがちですが、その前にマルチサイトの特徴とサイト拡張の目的の確認をおすすめします。
はじめに
WordPressをインストールし、マルチサイトの設定をする機会ありました。
それらの手順を解説している記事や書籍は多数ありますが、本稿ではマルチサイト化についての考え方も含めて2回に分けてレポートします。
その第1回として、本稿では、サイトの拡張やマルチサイトを導入しようと思ったときに考えるべきポイントと導入パターンを考えます。
読者としては一般的なレンタルサーバーにてサイトを運営している管理者を想定しています。Apache等HTTPサーバーの管理もしている方にとっては、HTTPサーバーのコンフィギュレーションに読み替えることは容易かと思います。
WordPressのマルチサイトとは
マルチサイトとは、一つのWordPressにて複数のブログ(あるいはサイト)が運用できるようになる機能です。各ブログにサブドメインを割り当てる方式(サブドメイン型)と、サブディレクトリを割り当てる方式(サブディレクトリ型)の2つがあります。
マルチサイトの特徴
WordPressのマルチサイト化によって、一つのWordPressがあたかも複数のWordPressのように動きます。といっても、完全に複数のWordPress環境をシミュレートできるわけではなく、以下の様な制限があります。
- テーマはネットワーク管理者が有効化したものだけ、ブログ管理者が選択できる。
- プラグインはネットワーク管理者がインストールしたものだけ、ブログ管理者が有効化できる。
(他にも微妙な差異はあるかも知れません。例えばpingサービスが設定できないとか。)
ここでネットワーク管理者とはWordPress(マルチサイト全体)を管理する人のことです。個別のブログの管理者をブログ管理者と呼ぶことにします。(尚、以下マルチサイトの文脈にて「ネットワーク」の語は、IT用語のネットワークではなく「マルチサイト」のことですのでご注意下さい。)
つまりは、ブログ管理者が自由にテーマをインストールしたり、プラグインをインストールしたりすることはできません。
マルチサイトにする理由
ディレクトリに新しいWordPressをインストールし、そのディレクトリにサブドメインを割り当てたり、サイトのサブディレクトリ(あるいはシンボリックリンク)にしたりすることもできます。なぜマルチサイトにするのでしょうか。
一つの理由はもちろん同じソースを複数デプロイする必要がないという、省メモリ(省HD?)効果です。それ以上に管理効率があります。
マルチサイトにすべき場合
ブログ管理者がWordPressの管理にはそれほど興味がなく、管理をサイト管理者に丸投げするような場合はマルチサイトが良いでしょう。サイト管理者は、一つのWordPressに対してバックアップやバージョンの管理、テーマやプラグインの構成管理をすれば済みます。
ブログ管理者に対しても、管理者が最初におすすめテーマ設定をしてあげれば、その後ブログ管理者は投稿をするだけです。
WordPressを複数インストールすべき場合
逆にブログ管理者が、特別なテーマやプラグインをインストールしたい、ということであれば、その人に対して個別にWordPressをインストールしたほうがよいでしょう。この場合サイト管理者は面倒見切れず、ブログ管理者をそのWordPressの管理者にして管理を任せるかもしれません。
本節の先頭にて「複数ブログ(あるいはサイト)」と書きました。ブログでなく「サイト」の場合は、特別なテーマやプラグイン、その他のカスタマイズが必要になる場合が多いと思います。ですので、容量が逼迫しているのでないかぎりは、新たにWordPressをインストールしたほうが良いのではないでしょうか。
導入パターンとサイト構成の再考
既にWordPressでサイトを運用している場合、既存のWordPressをマルチサイト化してブログやサイトを追加することが可能です。
しかしマルチサイトを導入する前に、サイト構成を今一度考えたほうが良いかもしれません。
既存のサイトイメージ
既存のサイトのディレクトリ構造とサイト構造を図示すると以下のようになります。
青がディレクトリ構造、赤がサイト構造のイメージです。
以降、この既存サイトにマルチサイトのWordPressを導入する際の、サイト構成のパターンを考えます。
サブディレクトリ型マルチサイトの導入
最初にサブディレクトリ型マルチサイトの導入パターンを考えます。
既存WPをサブディレクトリ型マルチサイトにする
単に既存サイトのWordPressをサブディレクトリ型のマルチサイトにする場合は以下ようになります。
鮮やかな赤が、新規に追加するブログです。
この場合、追加するブログのディレクトリ名(blog1,blog2)が既存のディレクトリパスと重ならないようにする必要があります。
既存サイトの管理者は持ち上がりネットワーク管理者になります。あるいは他の人がネットワーク管理者になるのであれば、サイト管理者はテーマやプラグインのインストールができなくなります。
新規WPをサブディレクトリ型マルチサイトにする
新しくディレクトリにWordPressをインストールし、それをサブディレクトリ型のマルチサイトにする場合は以下のようになります。
レンタルサーバーの管理ツールを使って、新規WPのディレクトリにサブドメイン(上図ではblogs.xxx.jp)を割り当てます。
この場合は既存サイトの構成に手を触れる必要がありませんので、マルチサイトの設定間違いによる既存サイトの障害リスクを無くすことができます。既存サイトの管理者も今までと同様にWordPressを管理できます。
新規WP(マルチサイト)をサブディレクトリにインストールする
前項に似ていますが、新規WPを既存WPのディレクトリの中のサブディレクトリにインストールする場合です。
この場合は、「www.xxx.jp」というドメインにコンテンツを統一することができます。既存サイトの管理もそのままです。
また新しいブログのディレクトリ名と既存のディレクトリの名前のバッティングも階層化によって防ぐことができます。
サブドメイン型マルチサイトの導入
次にサブドメイン型マルチサイトの導入パターンを考えます。
既存WPをサブドメイン型マルチサイトにする
既存サイトのWordPressをサブドメイン型のマルチサイトにする場合は以下のようになります。
私はサブドメイン型のマルチサイトを設定した経験はありませんが、レンタルサーバーのサブドメイン割り当てツールでも設定する必要があるでしょう。
既存のWordPressをマルチサイト化するので、運用においてサイト管理者とネットワーク管理者の問題が生じるかもしれません。
新規WPをサブドメイン型マルチサイトにする
新しくディレクトリにWordPressをインストールし、それをサブドメイン型のマルチサイトにする場合は以下のようになります。
お客様からみたサイトの見た目は前項と変わりません。管理の問題と、ネットワークの設定ミスによる既存サイトの障害リスクを考えるとこちらのパターンの方がよいかもしれません。
独立したWPとの併用
前章に書きましたように、ブログ管理者がWordPressの管理機能を使いたい場合は、独立したWordPressをインストールして併用することも可能です。
以下に2パターンだけ示します。
サブディレクトリ型マルチサイトでの併用
サブドメイン型マルチサイトでの併用
まとめ
以上、マルチサイトの特徴と導入パターンについて考えました。
現在WordPressでサイトを運営しており、複数ブログ(またはサイト)への拡張を考えている場合は以下を考慮します。
- サイトやブログのドメインとブランディング
- 拡張するブログ(サイト)のブランディング - サブドメインにすべきか、サブディレクトリでも良いか
- 既存サイトのブランディング - サブディレクトリに新規ブログを置いても希釈されないか
- 管理の問題
- 新規ブログ(サイト)では、テーマやプラグインのインストールやカスタマイズが頻繁に行われるのか?
- 新規ブログ管理者はWordPress自体を管理したいのか?お任せしたいのか?
- 既存のサイト管理者とマルチサイト化した時のネットワーク管理者の関係
そして以下を決定します。
- サイト構成(サブドメイン、URLパス《サブディレクトリ》構成)
- 新規WordPressのインストールとそのディレクトリ
- マルチサイトにするWordPress
次回はマルチサイト化の手順を簡単にレポートします。
初めまして。私は久保卓也(76歳)真空管時代の古爺です。ビルダーV7でホームページを作成程度のスキルしかありません。実は、息子がESN英語教育研究会なるサイトをwordpressで公開しております。英語の先生が主権で管理しております。このたび複数の先生のブログを同じサイト内で運用したいとの相談があり、WEBで長田@悠雀堂様の「サブディレクトリ型マルチサイトの導入」を拝見しました。こちらの方法で可能なのか私はwordpressやphpなどさっぱりわからず、どのようにすれば実現出来るのかサポーして頂けましたら有り難く存じます。
ご多忙と存知ますが、よろしくお願い申し上げます。
コメント有難うございます。
貴サイトを拝見させていただきましたがWordPressのようですので、マルチサイト化は可能です。(WordPressのバージョンアップが必要かもしれませんが。)
貴サイトを立ち上げた時の担当者様、実際に立ち上げた方(業者?)に、本ページと、その次の導入の記事をご覧いただければ、参考にしていただけると存じます。
あるホスティング・サービスでマルチ構造を組もうと
していたのですが、
ネット上の こうすれば解決しましたという
Hom To 情報では納得できない
(実際そこでは実行できない)
で悶々としていたのと、
ネット上にある.htaccess を
チョコッといじったくらいではまともに動くと思えなかったので、
海外の情報も含めて、悠雀堂さんのこの記事は
閃きにとてもやくだちしました。
やはり形而上で本質の構造を捉えることが大切ですね。
コメントありがとうございます。
私の考え方が正解とも限りませんが、何かしらインスピレーションを受けていただけたらうれしく思います。
長文になるのが欠点なのですが。。。
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