共創マーケティング:こどもとスマホ記(その6)

「こどもとスマホ」プロジェクトは、開始時から「共創マーケティング」を意識していました。

その共創マーケティングと、関連しそうなマーケティン3.0について、プロジェクトの経験やアイドルとリンクさせて考えてみます。

はじめに

前回は「こどもとスマホ」プロジェクトでのWebマーケティングについて書きました。

今回はプロジェクト開始時まで戻り、「共創マーケティング」の試みについて書きたいと思います。

そしてコトラー先生のマーケティング3.0との関係も考えてみます。

「共創マーケティング」とは、ざっくりいうと「お客さんと一緒にマーケティングをすること」です。

Negiccoマーケティング

このプロジェクトの開始時に、私は「新潟発アイドルNegiccoの成長ストーリーこそ、マーケティングの教科書だ」(川上 徹也 著、祥伝社、2014年)を読んでいました。

この本の序文に「Negiccoこそコトラーの提唱するマーケティング3.0だ」との旨が書いてあります。しかし私にはそうは思えませんでした。

「コトラーのマーケティング3.0」(フィリップ・コトラー ほか著、朝日新聞出版、2010年)は発売直後に読みました。しかしこの本のメッセージは「企業もソーシャル、価値観が大事」という感じです。

なので思いました。「Negiccoマーケティングは、マーケティング3.0より、共創マーケティングの方が近いんじゃないか知らん?」

Negiccoマーケティングには「ファンが、初めてライブにきたお客さんを見つけたら、最前列に案内してあげる。そしてファンにする。」という事例があります。ファンが「ライブ」というProductを一緒につくる、またファンがPromotionをする、というところが共創マーケティングです。

その他にも共創マーケティングの事例としては、サッポロの「百人ビール・ラボ」とか、藤原カムイの「福神町奇譚」が思いつきます。

日本のクラウド・ファンディングで行われているような、ストーリー共有型のプロジェクトもそうかもしれません。

こどもとスマホの場合

というわけで、「こどもとスマホ」プロジェクトも共創マーケティングをしてみました。

facebookを核に

プロジェクトの開始時に行ったことは以下です。

  • プロジェクト立ち上げ時に、facebookページを開設
  • FBページでのミーティング告知と「オンライン参加」の募集
  • ブレスト&KJ法に参加できるWebアプリ

実際のところ、コンテンツの作成過程に参加したのはコアメンバーの顔見知り。

Webアプリに書き込んでくださったのは、私の元同僚?のお二人のみ。

ということで、Product作成については共創できていません。

しかし制作過程からFBページを「いいね」して、見守ってくださっていた方々がいました。その方々が、サイト公開時にシェア・リンクをすることでPromotionをしてくださいました。

その時のサイトアクセス数の立ち上がりは、前回記したとおりです。

フィッシングサイト認定

前々回書きましたように、こどもとスマホのサイトがGoogleやトレンドマイクロにフィッシングサイト認定された時に、正直「おいしい」と思いました。

それは、ファンの方々と共有できるストーリーが一つ増えたからです。

(「フィッシング詐欺のサイトに注意」とも書いてあるマンガの配信サイトが、フィッシングサイト認定されて「危険です」と言われているとは、なんたるアイロニー!)

フィッシングサイト認定したのがGoogleやトレンドマイクロだけであれば目論見?通りだったのですが、さらに悪質なサイト認定するサービスがあったのは完全にマイナスでしたね(苦笑)。

TwitterでURLをTweetできなくなったこと、今もMcAfeeが悪質なサイト認定していることは、SEOやWebマーケティングどころではありません。

今後の共創マーケティング

今後も、Promotionや派生Productの作成に関して、facebookページに進捗を公開しつつ進められれば共創マーケティングになり得ます。

しかし、これが難しい。

例えばマンガの制作過程では以下の問題がありました。

  • 著作権の問題。使用許諾が決まっていない時点で途中の絵などを公開したら、一人歩きする可能性。
  • 意見の反映。FBページでご意見を頂いたとしても、マンガを書き直して反映させるのは非常に負担が大きい。

今思えば、FBページの読者数は少なくリスクは少ないのですが、万が一、があると大変です。

現在も、幾つか今後の展開を考えています。しかしオープンには出来ない情報もあります。それにちょっと共創できるような性質のものでもありません。

内部で方針が固まっているときは、それにリソースを集中して邁進することになります。

やはりリアルな顔見知りの口コミを頼ったPromotionくらいですね。

共創マーケティングで大切なこと

以上、共創マーケティングについて、アイドルと「こどもとスマホ」プロジェクトでの試みについて記してきました。

実際に試みて感じた一番のことは、「仕掛ける側の信用が大切」ということでした。

第一に信用

SNS上で、よく知らない人たちがプロジェクトを立ち上げていたとして、その掲げる目的には賛同できるとしても、参加はしにくいでしょう。「いいね」ボタンのクリックすら困難なのですから。

しかし顔見知りの人がメンバーであれば、参加はしやすくなります。

恐らくアイドルも同様でしょう。

地下アイドルだからと言って、事務所・プロデューサー・メディアなどの信用がない場合に、いきなり共創マーケティングを行ってもうまくいかないと思います。もし行うのであれば、最初の一年くらいは地道にやって、固定ファンとその信頼関係ができてから始めるのが良いのかもしれません。

企業の場合は、すでに信頼とブランドが確立しているかもしれません。「百人ビール・ラボ」のサッポロや、その他共創マーケティングを行っている企業はそうですね。

続いて大切なこと

仕掛ける側の信用があるうえで、大切なことは以下だと思います。

  1. 共創の場
  2. ゴールの共有
  3. スケジュール感と進捗の見える化

1点目は言うまでもありません。こどもとスマホでも考えていたように、オンラインとオフラインの2つがあります。こどもとスマホではブレストアプリを作ってみましたが、企業の場合のブレストでは「ハッシュタグをつけてツイート」でもよいかもしれませんね。

2点目は、「プロジェクト」としても必要なことです。ブレスト&KJ法でも必要です。「Productの開発」というゴールは大変にわかりやすいです。Promotionに関してはどうでしょう。ゴールというよりマイルストンのイメージになるでしょうか。

3点目は、これまで述べた信頼性や2点目に関連します。これが無いと信頼感がさがりますし、ゴールに近づいているのかもわかりません。

クラウド・ファンディングで投資を集めたスターターにも、これらは当てはまるのではないでしょうか。

マーケティング3.0について

共創マーケティングの前提として信頼とブランドを確立するには、ビジョン・価値観にファンが共鳴することが必要です。

ビジョン・価値観を中心におくことがマーケティング3.0の骨子ですから、共創マーケティングはマーケティング3.0の中のツールの一つと考えられます。

マーケティング3.0と共創マーケティング

マーケティング3.0では「3i」(Brand identity、Brand image、Brand integrity)ということが言われています。正直なところコトラー先生得意の「語呂合わせ」という感じがすることも否めません。

私は、「各頂点の、ポジショニング、差別化、ブランド、の統一性やバランスを大切にすること」くらいに理解しています。

3iよりも、その前のページに書いてある「未来のマーケティング活動の基盤」が、私にはしっくりきました。

すなわち以下です。

  • 共創
  • コミュニティー化
  • キャラクターの構築

再度アイドルの場合

先に、NegiccoのファンがPromotionに参加していることを書きました。

しかしNegicco側がそう仕掛けたわけではありません。ファンが何かしら「価値観に共鳴」し、Promotionに参加するようになったという点では、Negiccoマーケティングはマーケティング3.0なのかもしれません。何か施策を行ったわけではなさそうですが。

また「アイドル」というプロジェクト自体、共創マーケティングと相性がよいのでしょう。

AKBの握手会や総選挙も、アイドルとファンが価値観とストーリーを共有する、といった点ではマーケティング3.0、あるいは共創マーケティングといえるかもしれません。しかもダイレクトにCDの売り上げになりますし。

現在のアイドルに必須であるソーシャル・ツール(SNSやコメントが返せる動画配信など)の活用は、マーケティング3.0でも言われております。

そういえば最近、社会学者の濱野智史さんが、自分のプロデュースしているアイドルを「クソ」といって炎上したという話がありました。

リアルな10代の女性と仕事をしたところの正直な感想なのでしょうが、当のアイドルは勿論のこと、ファンとの共創にもマイナスでしょう。

もしかしたらマーケティング3.0の斜め上を行く、「炎上マーケティング3.0」だったりして…。

再度こどもとスマホの場合

「こどもとスマホ」では、マーケティング3.0と共創マーケティングの関系が逆でした。

はじめに共創マーケティングを試みました。行ったことは、コトラーが「未来のマーケティングの基盤」として上げている、共創、コミュニティー化、キャラクターの構築、でした。

コトラーのいう「キャラクター」はマンガのキャラクターではないでしょう。ここではFBページで発信するキャラクターに当てはめています。

その後完成したコンテンツを持って、差別化が固まってきたような気がします。

ブランドのシンボルは、マホ、テル、ネット仙人のようなキャラクターです。

ポジショニングはできていませんね。今後の課題です。(といってもまじめにするかどうか。)

そもそもマーケティング3.0では価値観が大切と言っていますから、このようなボランティア活動とは親和性が高いはずです。

まとめ

以上共創マーケティングについて、きっかけと「こどもとスマホ」での経験をもとに考えてみました。

マーケティング3.0との関係は、ちょっと強引だった気もします。

と書いていると、すでに「マーケティング4.0」が出ているとか…。

以上で一連の「こどもとスマホ記」シリーズは終わりです。

「こどもとスマホ」もプロジェクトなのでいつか終わります。Exit Planも考えておかないとですね。

次回はブレスト&KJ法に戻り、商品企画での活用を考えてみます。

コメントを残す