子供にもわかる方法を考える:算数順序問題(その4)

算数の順序問題を考えるシリーズの最終回として、ようやく子供にどう教えたらよいかを考えてみます。
前回までの(わけのわからん)「算数群」が、ここでようやく実を結びます。

はじめに

足し算の順序問題をイジる考えるシリーズの最終回です。

算数界

前回までで、私が「算数問題分類」といっている文章問題の分類が、MECEでなかったり時間の概念があったり、そして「順序ある派」の「しき」では演算子が多義だったりで、Confusingであることがわかりました。(というよりむしろ気持ち悪い)

そこでMECEで演算子の多義性もないキレイな世界、「算数域分類」と「算数群」を独自定義しました。(上図の真ん中の建物。)

しかし「独自定義では役に立たんだろう!」という、もっともなお声もあろうかと思います。

そこで本稿では、一部の先生が主張する「しき」の順番で×になって悲しい思いをした子供にも役立つような、「しき」に代わる「かた」(独自定義)を提案します。(上図の右の建物。)

といっても、いつも言い訳していますように、私は一介の技術者であり教育関係者ではありませんから、まあ教育界は変わらないと思います。

教育関係者でなくても、これくらいは考えられるぞ、という自己満足(というか頭の体操)でしょうかね。

結論

さて早くも結論です。

前回の最後の対応表ですが、「算数群」を「かた」に置き換えています。

また「体(数学の世界)」を「数式」としています。もちろん交換法則が成り立ちます。

  算数問題分類 算数域分類 かた 数式
足し算 合併 集合
(時間なし)
○ と△がいっしょになると? ○ + △ = □
△ + ○ = □
増加(時間あり)
求大 求大 ○より△おおきい(おおい)と? ○ + △ = □
△ + ○ = □
引き算 求残(時間あり) 分離
(時間なし)
○から△がわかれると? ○ – △ = □
求部分
求差 求差 ○と△のさは? ○ – △ = □
求小 求小 ○より△ちいさい(すくない)のは? ○ – △ = □
  算数問題分類 算数域分類 かた 数式
掛け算 長方形の求積 求積 ○と△のせきは? ○ × △ = □
△ × ○ = □
同数累加 求倍果 ○ の△ばいは? ○ × △ = □
△ × ○ = □
倍概念
割り算 求項 ○ のいっぺんは△、もういっぺんは? ○ ÷ △ = □
包含除 求倍数 ○は△のなんばい? ○ ÷ △ = □
倍を求める
等分除 求基数 ○は、なにを△ばいにしたもの? ○ ÷ △ = □
もとにする数を求める

順序ある派の主張のひとつは「しきの中の項の順序で子供の考え方がわかる」ですから、もう演算子は使わずに日本語にしてしまったほうが、子供の考え方が明確でしょう。

しかし考え方の文章が自由だと子供も先生も困るでしょうから、短いテンプレートを与えてあげ、それらを覚えることにます。それが「かた」。上の表の「かた」は私が考えたものですので、他の表現が適切ならばそれで良いでしょう。

「覚えるのは大変」というご意見もあろうかと思います。しかし足し算・引き算の段階で5つ、掛け算・割り算の段階で5つです。九九よりは少ないです。

そして順序ある派のもう一つの主張は「教師が教えやすい」というものです。(子供がわかりやすい?)

この場合も、例えば足し算で「後から増えたから、この問題は順番が必要で、この場合最初に存在したのはこっちだから…」とか考えるより、「○と△がいっしょになったら?」で「○ + △=!」(あるいは逆)の方がよっぽどシンプルでわかり易いでしょう。

答案の書き方

現在の算数の答案は、「しき」「こたえ」の2段階です。

これを「かた」「しき(交換法則が成り立つ)」「こたえ」の3段階にすればよいでしょう。

以前「かけ算の順序の問題について」という項で「式表現」というものを提案しました。本稿では、それをもうテンプレート化した文である「かた」にしました。

まとめ

以上、「式に順序ある派」に対して、より子供の考え方がわかり、よりわかり易いであろう「かた」を提案しました。もちろん「式に順序ない派」で、今のままで教育効果が十分であるなら、「しき」「こたえ」でよいのでしょう。

このシリーズのテーマも「一つのアウフヘーベンを考える」ことです。

しかし、小学校の先生も大変ですね。このような算数の他にも、ICT、英語を教え、さらには現在検討されている企業家教育、アクティブラーニング、21世紀型スキルも教えなきゃならんかもしれないのですから。

いっそのこと教員の資格に必要なのを大学院(graduate school)にしてしまって、社会を経験した人を含む様々な専門分野の人が先生になれるようにして、専門性の高い授業は専任性にしたほうがよいとさえ思います。

これまた一介の技術者が言うには提言ならぬ放言ですが。

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